オリーブ資料室

オリーブの特徴

1. 分類

オリーブ(学名:Olea europaea)は、日本国内に自生するイボタヌキ、ネズミモチ、キンモクセイなどと同じ、モクセイ科の常緑性の広葉樹です。
地中海東部が原産とされ、Fausto L.(1996)によれば、オリーブ属にはOlea europaea L.,O,chrysophylla Lam. など12種4変種が知られており、ヨーロッパ南部からアフリカ、インド、マレーシア地域、北オーストラリアにかけて広く野生種が分布しています。オリーブは分類学的には4つの変種に区分され、野生種と栽培種に分かれます。

2. 樹木
樹木

常緑の中高木で、品種により直立性、開帳性、中間性の特徴があります。樹齢はきわめて長く、南欧においては樹齢が1000年以上のオリーブの木が見られます。土壌条件のよい土地では、成木になると樹高が10m以上にもなるものもあります。

成長が早く、挿し木苗1年生で30~40㎝、2年生苗で60~80㎝に伸長し、5~6年生になると3m以上、10年生になると5m以上、20年生以上で放任すると7m以上に伸長します。この伸長量は品種や栽培条件、土壌条件によって異なります。

新芽の発生は3月中旬で、以後12月下旬まで成長を継続します。成長の盛んな5月頃から10月下旬までです。根の酸素欠乏にはきわめて敏感で他の食物に較べ酸素要求度が強い性質を持っています。南欧においては耕土が6mもあり通気性の豊富な土壌では根が深く侵入していますが、小豆島の産地では花崗岩が母岩であって70m下(もっと浅いところもある)には岩盤があるような土壌では根は伸長できず、根は酸素を求めて浅根になります。一般的に浅根性といわれるのは耕土が浅く孔隙量の少ない土壌が原因であるようです。オリーブ樹の特性について「浅根性だといわれるが、これは土壌の浅い場所で調査したときのことであって、深い土壌でも根も深く伸び生育が良好で、決して浅根性ではない」と述べられています。

なお、根は繊維の発達が劣り脆い性質を持ちます。特に、根幹部は多肉質で折れやすい。このことから、強風によって根が動かされると破損し倒伏しやすいので風当たりの強いところでは常に支柱をしておく必要があります。

3. 枝、葉

葉芽は4月上旬に萌芽し同下旬から5月上旬に発芽します。新梢は、前年枝の頂芽および腋芽から発生するが、2年生以上の枝の陰芽からも発生します。前者は直立性の品種に多く、隔年結果が強い。後者は開帳性の品種に多く、隔年結果性が弱い。新梢の生育旺盛な時期は、5月から10月に至る長い期間ですが調整は千差万別です。枝の切り返し部分から不定芽の発生は各品種とも良好で、任意の部分での切り返しが可能です。

発生した若い1~2年生の枝葉は繊細で、新梢表皮には毛茸が密生していますが、1~2年後に消失し皮目が発達してきます。皮目の形態分布あるいは樹皮色は品種固有のもので、その識別に役立ちます。樹皮は十数年を経れば粗皮を生じ、逐次亀裂し剥脱します。

葉は革質披針形の単葉で体生に付き、品種により大きさ、形態、葉色、毛茸の多少のなどが異なります。葉表はクチクラ層に覆われて光沢のある灰緑色をし、葉裏は密生した毛茸に覆われ銀白色をしているため、風に吹かれるとそよそよと反射して美しく見えます。

新葉の発生は主として4月中下旬~10月までで、柑橘のような季節による枝・葉の形状の差はほとんどみられません。そして、正常な発育を遂げた葉は3年目の春に全面黄化し落下します。なお、不良な環境で育った葉は2年目、著しいときは針葉でも落下します。

4. 花

花芽は前年春から夏に伸長した部分の葉腋に12月頃から生理的に分化を始め、形態的には翌年3月下旬頃に分化します。4月上旬萌花後花茎を伸長しながら急速に花器の形成・発達が進み、5月中旬にはほとんど完成させて下旬から6月上旬に開花します。

花は複総状花序で、白色の小花を1花序10~30個内外着生します。直径3mm程度の乳白色で釣鐘状の4列した合弁花冠であり、4片のがくと1雌蘂、2雄蘂を有しています。柱頭が完全に発育すると品種特有の形態を示しますが、柱頭の発育が不完全あるいは退化した不完全花も多数発生します。このような状態は冬から春にかけての土壌の乾燥状態、樹体の栄養不良で特に多くなるのであって、完全花と不完全花の割合は品種や年によって著しい差がみられます。

開花は早朝から夜遅くまでほとんど終日行われますが、1日約3回の波相が認められ花粉の飛散も同様です。雌ずいは開花の2日前から受精力が備わり、開花後5~6日間は相当高い受精率をし、その長いものは開花後12日間ぐらい寿命を持っています(尾崎、1952)。

なお、花には蜜がなく、香りのはほのかに香る程度ですが香りの成分は多種確認されており(長谷部1992)、オリーブ・フラワー・オーテコロン等オリーブ香水として利用されています。多量の花粉を飛散させる風媒花で、自家不和合成が強い。オリーブの不結実現象の原因の一つは自家不結実性にありますが、品種によっては自殖能力があるものもあります。

5. 果実

オリーブの果実は桃や杏と同じ核果類に属しますが、他の核果類は果肉にかなりの糖分が含まれるのに対し、オリーブはそれほど多くなく油分が多いのが特徴です。また、ほかの核果類はそのまま剝いて生のまま食べられますが、オリーブの実にはオリュロペインと呼ばれるタンニンに似た物質で渋みが強くて生食することはできません。

果実は、外果皮、中果皮(果肉)、内果皮(核)および種子(胚乳・子葉)に分かれ、受精後急速に肥大します。約40日間で細胞分裂は終了し、7月下旬から8月上旬には内果披が硬化して核を形成します。この硬核期以降果肉の肥大が盛んに行われます。果形は品種によって異なり、大きさも1~10グラム以上のものまで様々です。外果皮は初め緑色をしていますが、成熟するとともに緑黄色から赤紫色に変わり、完熟すると黒紫色に着色します。

果肉と種子にはオレイン酸グリセライドを主成分とするオリーブ油が含まれますが、各品種とも果実の発育に伴って含油量が増加し、11月上旬に最高になります。含油率は品種、栽培法、気象条件などによって大きな差が生じ、高い品種で21%、低い品種で6.0%前後になります。

落果現象は前期と後期に大別されます。前期落果は開花後から7月下旬の間に現れますが、最初の9~18日間でほとんど落果し、以後はわずかながら断続的に落果します。前期落果の原因は、主として花粉内の栄養競合や結果枝先端の新梢伸長との養分競合により生理落果です。後期落果は8月中旬と9月下旬の2波の落果がみられますが前期落果に比べわずかです。

果実の肥大と葉数の間には密接な関係がみられ、1果あたりの葉数が多くなると果実は大きくなります。テーブル・オリーブの果実を確保するには、ミッションで10葉、マンザニロ5葉が最低必要となります。なお、葉数の増加によって果実は肥大しますが、1果あたりの枚数が20枚を超えるとその効果は認められなくなります。

(出典:社団法人日本果樹種苗協会 オリーブ)